ものづくり補助金(第22次公募)③審査で高評価を獲得するポイント

第3回 「事業性」「実現可能性」の審査で高評価を獲得するために

こんにちは。山崎コンサルです。

前回は事業計画書の全体構成についてお伝えしました。今回は、審査項目の中でも特に重要な「事業性」と「実現可能性」に焦点を当て、具体的な対策方法をお伝えします。以下の9つのポイントで解説します。

ポイント①「革新性」:既存技術ではできないことが、できるようになるのか

ここが最も重要です。「業界で初めて」「従来比で〇倍の性能」といった独自性が評価されます。

実例:

❌ 不採択例:「既存の自動加工ラインを導入して、生産効率を上げる」
→ 既に市場に普及している技術の導入だけでは、革新性がない。

✅ 採択例:「AI画像検査システムを導入し、従来の目視検査では見つけられなかった0.1mm以下の微細な欠陥を自動検出し、検査精度を99.9%に向上させる新しい品質管理プロセスを確立する。これにより、高精度が求められる医療機器分野への新規参入が可能になる。」
→ 新しい検査プロセスにより、新規市場開拓が可能という、革新性と事業化の結びつきが明確。

ポイント: 「何を導入するか」ではなく、「その導入により、従来は不可能だったことが可能になるのか」を強調してください。

ポイント② 課題の明確性:なぜこの投資が必要なのか

現在直面している課題を、できるだけ数値で示しましょう。

実例:

❌ 不採択例:「製造の効率が悪いので改善したい」
→ 抽象的すぎて、審査員は課題の深刻度を判定できない。

✅ 採択例:「現在、ボルト組立工程は全て手作業で、1人が1日に完成させられるのは平均50個。業界標準は1人1日100個。加えて、繁忙期は月60時間の残業が発生しており、人件費が経営圧迫要因となっている。これを自動組立装置の導入により1人1日150個に引き上げ、業界平均を上回る生産性を実現し、残業を月10時間に削減する。」
→ 課題が数値で明確になり、投資の必要性と効果が説得力を持つ。

ポイント: 「現状値」「業界標準」「投資後の目標値」の3点セットで説明しましょう。

ポイント③ 解決方法の妥当性と優位性

複数の代替案と比較検討した上で、なぜその設備を選んだのかを示してください。

実例:

❌ 不採択例:「〇〇メーカーの装置を導入することにした」
→ 検討プロセスが見えない。

✅ 採択例:「自動組立装置について、国内メーカーA社とB社、海外メーカーC社から見積書を取得し比較検討した結果、以下の理由でB社を採択:

  • イニシャルコスト:B社がA社比で20%低廉
  • 精度:B社は±0.5mm、A社は±1mmで、B社が優位
  • メンテナンス性:B社は国内に保守拠点があり、対応が迅速
  • ROI:3年の投資回収シミュレーションでB社が最適」
    → 合理的な選定プロセスが示されている。

ポイント: 見積書は複数社から取得しましょう。補助金採択後の「事後チェック」の際に、このプロセスが確認されます。

ポイント④ 技術的能力の確認

あなたの会社が、本当にこの事業を遂行できるのかが問われます。

  • 経営陣や設計技術者の経歴
  • これまでの類似プロジェクト経験
  • 必要に応じた外部専門家の活用

実例:

❌ 不採択例:「新しい分野なので、勉強しながら進めます」
→ 実現可能性に疑問が残る。

✅ 採択例:「当社の設計技術者は、10年間の自動化機械の設計経験を有している。加えて、〇〇大学の機械工学部との共同研究により、〇〇技術の最先端知識を習得している。本事業の実現性は十分に確保されている。」
→ 能力と経験が根拠を持って示されている。

ポイント: 外部の専門家(コンサルタント、大学研究室など)との協働も、加点要因になります。

ポイント⑤ 新製品・新サービスの定義が明確か

第22次公募では特に重視されるポイントです。「新製品・新サービス」の定義が曖昧だと採択されません。

実例:

❌ 不採択例:「既存の〇〇製品を、より自動化されたプロセスで製造する」
→ 新しい製品が生まれていない。

✅ 採択例:「従来は人手作業で製造していた〇〇製品に、新たにAI検査機能を組み込んだ新製品『〇〇Pro』を開発する。これにより、従来製品では対応できなかった医療機器向けの高精度市場を新たに開拓できる。」
→ 新製品の定義が明確で、市場性も示されている。

ポイント 市場ニーズの検証

「この製品は本当に売れるのか?」という根本的な問いに答えなければなりません。

実例:

❌ 不採択例:「当社が素晴らしいと思っているので、きっと売れます」
→ 根拠がない。

✅ 採択例:「既存顧客10社にヒアリング調査を実施し、全社から『現在のような高精度検査が自動化されれば、確実に導入したい』との回答を得た。加えて、業界全体で高精度検査ニーズが高まっているという市場調査レポート(〇〇機関発表)も確認している。市場ニーズは確実に存在する。」
→ 顧客ニーズが現地調査で確認されている。

ポイント: 既存顧客へのヒアリング、業界団体のデータ、市場調査レポートなど、複数の根拠を示しましょう。

ポイント 実現可能な事業計画の策定

事業化のスケジュールと体制が具体的か、が重要です。

実例:

❌ 不採択例:「令和7年に設備を導入して、販売を始めます」
→ スケジュールが粗すぎる。

✅ 採択例:

  • 令和7年3月:設備導入完了
  • 令和7年4月~6月:試作品製造と改善、既存顧客への品質評価
  • 令和7年7月:量産体制確立
  • 令和7年8月:営業活動開始、初期注文獲得
  • 令和7年9月~:本格販売開始
  • 営業責任者:〇〇(営業経験15年)、技術責任者:〇〇(設計経験10年)

→ 月単位のマイルストーンと担当者が明確。

ポイント: 「試作→評価→改善→量産」のサイクルを示し、各段階での責任者も記載しましょう。

ポイント 優位性と価格設定の妥当性

競合製品と比較して、なぜ顧客が選ぶのかを明確にしましょう。

実例:

❌ 不採択例:「〇〇という特徴があるので、競合製品より優れています」
→ 定性的すぎる。

✅ 採択例:

項目当社新製品競合製品A競合製品B
検査精度99.9%99.0%98.0%
検査速度(個/分)120100150
導入コスト3,000万円3,200万円2,500万円
メンテナンス費(年)100万円150万円120万円
ROI(5年)最優秀次点不採算

→ 総合的な優位性が数値で示されている。

ポイント: 単に「安い」「性能が高い」ではなく、「総合的なコスト&パフォーマンスで優位」を示しましょう。

ポイント 費用対効果の明確な示し方

これは採択に最も直結するポイントです。

実例:

❌ 不採択例:「売上が増えることを期待しています」
→ 具体性がない。

✅ 採択例:

  • 補助対象経費:1,000万円
  • 補助金(1/2):500万円
  • 自己資金:500万円
  • 新製品年間販売目標:
  • 令和7年:5,000万円(100個)
  • 令和8年:8,000万円(160個)
  • 令和9年:12,000万円(240個)
  • 3年累計:25,000万円
  • 原価率:60%(粗利率40%)
  • 3年間の見込み粗利:1億円
  • 投資回収期間:6ヶ月

→ 補助金投入額に対する具体的なリターンが示されている。

ポイント: 「事業計画期間内に、投資額の2~3倍以上のリターンが見込まれるか」を示すことが、採択の大きな加点になります。

【まとめ】申請書作成時の実践チェックリスト

事業計画書を完成させる際に、以下を確認してください:

□ 課題が数値で示されているか(「現在月100時間」など)
□ 投資後の目標値も数値で示されているか(「目標は月50時間」)
□ 既存技術との違い(革新性)が明確か
□ 複数の設備メーカーから見積を取得したか
□ 既存顧客へのヒアリングや市場調査の根拠があるか
□ 新製品の定義が明確か(新しく何が生まれるのか)
□ スケジュールが月単位で示されているか
□ 各段階の責任者が明確か
□ 3年間の売上・利益予測が保守的だが実現性があるか
□ 投資額に対する3年間のリターンが2倍以上か

次回は「賃上げ特例」の活用方法

第3回では、「事業性」と「実現可能性」の審査対策についてお伝えしました。

第22次公募で見逃せないのが、「賃上げ特例」による補助上限の引き上げです。次回(第4回)では、この特例の活用方法と実装ステップについて、詳しくお伝えします。

最大4,000万円の補助を獲得するチャンスを活かすために、ぜひご覧ください。

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