小規模事業者持続化補助金とは
「小規模事業者持続化補助金」は「小規模事業者」が「販路開拓」する取組の費用の3分の2が補助金で戻ってくる制度で、かなり幅広い経費を対象にできる使い勝手のいい補助金です。
※2024年(令和6年)5月27日をもって第16回公募の応募が締切となりました。次回の公募時期は未定です。
制度概要
「小規模事業者」の「販路開拓」する取組の費用の3分2が補助金で戻ってきます。
「販路開拓」とはどんなものかというと例えば以下があります。
・ホームページの作成や改良(単なる会社紹介は不可だが販売の狙いを持った内容なら可)
・広告掲載費用(ネット広告も可)
・販促チラシの作成や送付の費用
・展示会出店やPRイベントの費用
・店舗の改装、陳列棚購
・新商品の開発
つまり、かなり幅広いですよね。いくつか条件もありますがそれは後述します。
ただし申請すれば無条件でもらえるものではなく、公募期間内に申請した後に事務局で審査されて、そこで採択される必要があります。
申請にあたっては管轄の商工会/商工会議所に「事業支援計画書」というのを作って頂いて一緒に添付する必要があります。したがって締切ぎりぎりに申請書完成では間に合わないので、一週間くらいの余裕を持って完成させてから、商工会/商工会議所に依頼しましょう。商工会/商工会議所の会員でなくても対応して頂けます。
対象条件
日本国内に本社がある「小規模事業者」が対象です。
法人だけでなく個人事業者でもOKです。
ものづくり補助金などの他の補助金では「中小企業全般」が対象のものが多いですが、この「小規模事業者持続化補助金」は中小企業の中でも特に「小規模事業者」だけが対象なので注意が必要です。
「小規模事業者」とは具体的には以下の基準です。
業種 | 条件 |
---|---|
製造業その他 | 常時使用する従業員の数 20人以下 |
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業) | 常時使用する従業員の数 20人以下 |
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) | 常時使用する従業員の数 5人以下 |
原則は一番下の従業員数5人以下の条件、製造業など一部業種は20人以下までOKとお考え下さい。
従業員数は役員や事業主を除いた従業員数です。正社員以外のパート・アルバイトも常勤なら含みます。
医師、医療法人、学校法人、社会福祉法人などの組織形態はこの補助金の対象外になっています。詳しくは公募要領で確認ください。
この条件を満たした小規模事業者による、「販路開拓等の取組」が補助金の対象です。
また、販路開拓とあわせておこなう業務効率化(生産性向上)の取組も対象になります。
また重要な条件として、補助金申請して採択された後に届く「補助金交付決定通知書」の受領後でないと対象経費の発注・契約・支出はできないという条件があります。採択前に発注してしまった経費は対象にならないので、注意ください。
補助金額の計算方法
補助対象経費の3分2が補助金として返ってきます。
ただし通常枠は上限が50万円です。したがって例えば以下の計算になります。
・対象経費が60万円なら補助金は40万円。(自己負担が20万円)
・対象経費が75万円なら補助金は50万円。(自己負担が25万円)
・対象経費が90万円なら3分の2は60万円ですが上限50万円なので補助金は50万円。(自己負担が40万円)
消費税の扱いは原則は税抜き価格で全て計算しますが、免税事業者や簡易課税事業者は消費税込みで計算します。
また、補助金の上限が増加する特別枠もあります。
こうした応募枠に関する制度や条件は頻繁に変更がありますので、公式ページ等で確認ください。
現在の第15回公募の申請枠一覧は以下の図のようになっています。
おすすめは「賃金引上げ枠」です。補助上限が200万円。インボイス特例も満たす場合は250万円となります。
条件の詳細は公募要領を確認頂きたいですが、簡単にいうと、採択後の補助事業実施(補助金対象の経費支払)をした終了月に規程以上の賃上げを実施するという条件です。
経営者からみると賃上げの負担は少しありますが、補助上限が200万円に上がるメリットの方が大きいですし、従業員のモチベーションも上がるでしょうから悪い話ではないと思います。また毎年10月には各都道府県の最低賃金が引き上げられますが、それをうまくからめると実質的な追加負担がない感じにできる場合もあります。
ただ「賃金引上げ枠」は従業員0人の会社は対象外なのでご注意ください。
それ以外の「卒業枠」「後継者支援枠」「創業枠」は、かなり条件が厳しいので該当する会社はほとんどないと思われます。詳細は公募要領を確認頂いて、もし該当していれば活用検討ください。
補助対象経費の範囲
補助対象経費として認められる経費区分は以下の通りです。
①機械装置等費、②広報費、③ウェブサイト関連費、④展示会等出展費、⑤旅費、⑥新商品開発費、⑦資料購入費、⑧借料、⑨設備処分費、⑩委託・外注費
各経費区分の詳細はここに全部書いてもしかたないので公募要領を確認ください。
基本的には①機械装置等費、②広報費、③ウェブサイト関連費、⑩委託・外注費、の4つが対象にしやすいです。それ以外は条件が難しかったり金額が少額すぎて事務負担に見合わないようなものなのであまり考えなくていいです。
ここでは、②広報費、③ウェブサイト関連費を補足します。
②広報費で代表的なのは、チラシ・カタログのデザイン費や印刷費および発送費(ポスティング代行含む)、新聞・雑誌等への広告出稿費、看板作成・設置費用などです。
③ウェブサイト関連費で代表的なのは、ウェブサイト(ホームページ)の制作費、それ以外にもインターネット広告費、システム開発費、動画制作費、SNS関連経費、などがすべてこの経費区分に含まれます。また、ウェブサイト関連費は申請額の1/4以下、かつ最大50万円までという制限があります。この経費区分で多額の費用を使って補助金を受けたい会社は多いと思うのですが、この制限があるのでうまくバランスを考えて申請する必要があります。
それ以外の注意点として以下です。
・申請時の事業計画で対象としている商品サービスの広報を目的としたものが対象です(単なる会社のPRは対象外)。
・公募回ごとに実施期限がありますが(第15回公募では2024年10月31日まで)、その期間内にチラシ・カタログ等は配布使用した分、ホームページや広告は制作完了して公開された分しか対象にできません。
・月額課金や、掲載期間が決まった前払いなどは、事業期間内に掲載および支払が完了している分のみが含められます。
採択のポイント(1)(事業計画書)
採択のポイントとして、申請時に添付する事業計画書の出来が重要です。
補助金申請に使う事業計画書のフォーマットが決まっていて、様式をダウンロードしてそれに埋める形で作っていきます。
様式の前半は項目ごとに単純に埋めていきますが、後半にはざっくりとした項目が8項目あります。
公式のホームページからはその記載例もダウンロードできるのですが、この公式の記載例がけっこうあっさりしています。
ここが審査で重要な部分ですので、しっかりと必要事項を書きながらアピールが必要です。
審査は相対評価的な面もあるので、公式の記載例レベルでは落ちてしまう可能性がありますので注意してください。
では8項目について個別に解説します。
<経営計画>1.企業概要
ここには企業(事業者)の現在の概要を書きます。
以下を網羅するように表現しましょう。図やグラフや表や画像もあるといいです。
・開業年月日
・場所
・業種
・組織構成や人数や規模
・創業の経緯(なぜこの事業を始めたか、共感を得られる内容だといい)
・既存事業の内容(ビジネスモデル概況図をつけるといい)
・売上・利益の大きいサービス
・現在までの状況と今後の展開(ここは後述の補助事業計画との一貫性が大事)
<経営計画>2.顧客ニーズと市場の動向
事業戦略の基本として「3C分析」という手法があります。
3Cとは、顧客・市場(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)のことです。
ここでは顧客・市場の特性をしっかり把握や分析できていることをアピールします。
また競合の把握や分析についてもここで書くといいでしょう。(公式の記載例にも記述があります)
これを踏まえて、具体的には以下を網羅するように表現しましょう。
・ターゲット市場や顧客(できる限り具体的に)
・ターゲット市場や顧客を取り巻く環境(ターゲットが抱えている問題点や動向等)
・ターゲット市場の傾向(拡大傾向なのか、縮小傾向なのか。出典元も明記しながら客観的に)
・ターゲット顧客のニーズ(ターゲット顧客が本当に求めているもの。仮説でも可)
・ターゲット顧客に対する注力ポイント(何を重視してビジネスを行っているのか?)
・競合について(具体的な競合名と、その競合との相違点について説明)
・将来の見通し(自ら行っているビジネスにいかに伸びしろがあるのかという根拠を書く)
<経営計画>3.自社や自社の提供する商品・サービスの強み
公募要領の審査項目には下記の審査ポイントが明記されています。
「自社の製品・サービスや自社の強みを適切に把握しているか。」
これを意識して、具体的には下記の要素を盛り込んで表現しましょう。
・自社の強み(箇条書きで列挙するといい、後述する今後のプランや補助事業の内容が強みを生かしたものになっているのがいい)
・自社の強みによるターゲット顧客のメリット
・顧客に評価されている点
<経営計画>4.経営方針・目標と今後のプラン
公募要領の審査項目には下記の審査ポイントが明記されています。
「経営方針・目標と今後のプランは、自社の強みを踏まえているか。」
「経営方針・目標と今後のプランは、対象とする市場(商圏)の特性を踏まえているか。」
これを意識して、具体的には下記の要素を盛り込んで表現しましょう。
・経営方針(自分のビジネスで目指すべき姿を具体的に)
・経営目標(3年程度の行動目標と数値目標を)
・今後のプラン(上記の経営目標達成するための具体的な行動計画)
また、様式にも記載の通り、「新型コロナウイルス感染症加点」の付与を希望する事業者については、同感染症の影響(罹患や売上減の状況等)と、そこからの「事業再建に向けた今後のプラン」を盛り込んでください。
<補助事業計画>1.補助事業で行う事業名(30文字以内)
キーワードを入れて、簡潔でわかりやすい事業名にすること
(例:「販路開拓」「販路拡大」「新規顧客獲得」「業務効率化」「◯◯事業」「◯◯サポート」「売上増加」等)
<補助事業計画>2.販路開拓等(生産性向上)の取組内容
公募要領の審査項目には下記の審査ポイントが明記されています。
「補助事業計画は具体的で、当該小規模事業者にとって実現可能性が高いものとなっているか。」
「地道な販路開拓を目指すものとして、補助事業計画は、経営計画の今後の方針・目標を達成するために必要かつ有効なものか。」
「補助事業計画に小規模事業者ならではの創意工夫の特徴があるか。」
「補助事業計画には、ITを有効に活用する取り組みが見られるか。」
これを意識して、具体的には下記の要素を盛り込んで表現しましょう。
・補助事業の目的(自社がこの事業を行うことで得たいと考えている具体的な目的、この補助事業を行うことでどのような社会貢献になるのかの目的)
・新サービスの具体的内容(新商品・新サービスサービスに関する具体的な説明)
・新サービスの価格(どれくらいの価格にするのか、補助事業の効果の根拠となる)
・販路開拓の具体的内容(販路開拓を行うために具体的に何をするのか)
・集客方法(集客方法、集客出来る根拠)
・これまでの自社の取組と異なる点(今までに行ってきたこと、これから行うこと、この取組を行うことによる経済的波及効果)
・他社の取組と異なる点
・創意工夫した点(補助事業を行う上で、どのようなアクションを起こしてきたのか、実績も含めて具体的に)
・特徴(アピールすべきこのサービスの特徴を書く)
<補助事業計画>3. 業務効率化(生産性向上)の取組内容
*公募要領P.31 に該当する取組を行う場合は本欄に記入します。特になければ本欄は空欄のままご提出ください。
ここは絶対というわけではありませんが、該当があれば記入します。
<補助事業計画>4.補助事業の効果
公募要領の審査項目には下記の審査ポイントが明記されています。
「事業費の計上・積算が正確・明確で、事業実施に必要なものとなっているか。」
これを意識して、具体的には下記の要素を盛り込んで表現しましょう。
・本事業を行うことでの具体的効果とその理由(新規商品やサービスの売上や利益がいくらになるのか、新規商品やサービスを開始することで既存商品やサービスの売上や利益はどれくらい増えるのか)
・補助事業計画と経営計画との関連性(経営計画書の「経営方針」との整合性がとれているのか、この補助事業計画が経営計画の今後の方針・目標を達成するために必要かつ有効なものになっているか)
全体通してのポイント
・図やグラフ、表、画像等を挿入してビジュアルで表現すること。審査員は多数の申請書を見ますから分かりやすさが重要。
・文章にもメリハリをつけること。黒一色の文章が並ぶより、色を変えたり、アンダーライン、網掛けを利用する工夫を心掛けてください。
・具体性をもって書くこと。抽象的な表現はよくないです。できるだけ細分化して数値を使って表現が望ましいです。
・一貫性を持って書くこと。各項目間の一貫性や整合性、ストーリー性があることが大事です。
・様式3に経費明細表を書くところがありますが、ここの計算の間違いや記述漏れがないか? これすごく大事です。
加点項目
採択のポイントのもうひとつは加点ポイントです。
以下の加点ポイントがあり、条件に該当する場合は申請すれば審査で優遇されます。
加点条件は頻繁に変更がありますので、詳細は公式ページなどで確認ください。
また減点ポイントもあり、過去に小規模事業者持続化補助金の交付を受けているとその回数に応じて減点という規定があります。リピーターは若干不利に、ルーキーは相対的に有利になります。
採択後の注意点
申請の応募締切から数カ月後くらいに採択の可否の発表があります。
採択されれば「補助金交付決定通知書」が受け取れるはずです。
その決定通知より後の日付で各経費の発注や契約や支払をすることと、その発注書や領収書などの証票は大事に保管することが、最大の注意点です。
詳しくは交付決定時に、補助事業実施に係る注意点等を記載した「補助事業の手引き」が事務局から配布されるのでそれに準じて行動します。
全ての支出が完了した後に「実績報告書」を証票コピーとともに事務局に提出します。
その後、事務局で確認後に、「補助金の額の確定」の通知が来て、その後にやっと補助金が振り込まれます。
したがって支払が先行して、補助金入金はかなり後になりますので、その間の資金の確保に留意ください。
通常、「補助金交付決定通知書」を受けていればそれを担保代わりにした金融機関の融資が受けやすいので検討ください。
また、他にも以下に義務が生じますので対応する必要があります。
・終了から1年後に「事業効果および賃金引上げ等状況報告」を提出する必要があります。
・終了から5年間は帳簿や証票類の原本を保管して、求めがあればいつでも出せるようにする必要があります。
当社の申請支援サービスについて
【サービス内容】
・「事業計画書」の作成にあたっての各種支援(ヒアリング~相談・助言対応)
・電子申請システムで応募操作する際の補足説明(Zoomにて対応)
・採択後の「実績報告」の作成と提出のサポート
・補助金受領1年後の「事業効果および賃金引上げ等状況報告」の提出サポート
【コンサル料金】
・応募枠や補助額にかかわらず、原則として一律で25万円(税別)
着手時に前金でご請求してお預かりし、採択時に確定、不採択時には全額返金します
(ただしお客様都合による中止や不備など当社に責任がないケースは返金対象外とします)
また、当社はWeb集客支援として、ホームページ制作や動画制作のサービスも始めました。
補助金申請とホームページ制作や動画制作をセットでご相談していただける方は特に大歓迎いたします。
補助金適用を加味した実質料金はかなり割安になります。詳しくはご相談ください。
お気軽にお問い合わせください。
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