ものづくり補助金(第22次公募)②採択のポイント

第2回 採択を勝ち取る事業計画書の書き方~審査項目から学ぶ成功のコツ
こんにちは、山崎コンサルです。
ものづくり補助金の採択のカギを握るのは、何といっても「事業計画書」です。第1回では補助金の基本情報をお伝えしましたが、今回はいよいよ「どのようにして申請書類を作成するのか」という実践的な内容に入ります。
ここで最も重要な視点は、「審査員は何を評価するのか?」を理解することです。
ものづくり補助金の審査項目は6つ
ものづくり補助金の事業計画書は、大きく6つの審査項目、および加点項目・減点項目から審査されます。
| 審査項目 | 審査内容 |
|---|---|
| ① 補助事業の適格性 | 公募要領記載の対象要件等を満たしているか |
| ② 経営力 | 市場・顧客動向の分析、自社の強み・弱み、経営目標 |
| ③ 事業性 | 本事業の顧客ターゲットや提供価値、競合との分析や優位性 |
| ④ 実現可能性 | 本事業に必要な技術力・人材・財務状況、費用対効果の明確さ |
| ⑤ 政策面 | 地域経済への貢献、雇用創出、国の経済政策との整合性 |
| ⑥ 大幅賃上げの妥当性(大幅賃上げ特例申請者のみ) | 賃上げ取り組みの具体性や算出根拠 |
多くの申請者が陥る落とし穴は、「設備投資の内容を説明する」ことに終始してしまう点です。審査員が見たいのは、その設備投資がもたらす経営的インパクトであり、それをこの6つの審査項目で評価する仕組みになっています。
この6つの審査項目のさらに詳細内容についても公募要領にて記載されており、長くなるので転記は割愛させて頂きますが非常に重要なポイントになりますのでそちらを熟読してください。
なお、6つの審査項目の配点について公開はされていないですが、内部的には決まっていてそれぞれ〇点満点中の〇点という形で採点されてその合計で点数がつくしくみになっているようです。推測になりますが②③④あたりが特に配点が高いと思われますので、それを意識した事業計画書でのアピールが高い点数を取るポイントになります。
この審査項目でついた合計点数に対して、さらに加点項目・減点項目がつきます。こちらも具体的に何点が加点・減点されるかは公開されていませんが、傾向としては少なくないインパクトがあるのは明らかです。
公募のたびに細かく増減するのですが、第22次公募では以下の15項目の加点ポイントがあります。(このうち最大6項目まで有効)
①経営革新計画を取得済
②パートナーシップ構築宣言を行う
③再生事業者(詳細は公募要領の別紙4を参照)
④DX認定を取得済み
⑤健康経営優良法人2025に認定
⑥技術情報管理認証を取得済み
⑦J-Startup、J-Startup地域版に認定
⑧新規輸出1万社支援プログラムポータルサイトに登録(グローバル枠のみ)
⑨事業継続力強化計画を取得
⑩賃上げ表明「総額で年4% &最低賃金+40円」
⑪従業員50名以下の中小企業が被用者保険の任意適用
⑫えるぼし認定を取得
⑬くるみん認定を取得
⑭過去3年以内に事業承継した
⑮成長加速マッチングサービスに登録
企業の事情によって取れるものと取れないものがありますが、取れる加点ポイントを確実にとっていくのが重要です。
特に、②パートナーシップ構築宣言、⑨事業継続力強化計画、⑮成長加速マッチングサービス登録は比較的簡単に承認が取れるので確実にとりましょう。⑩賃上げ表明も、どうせ必須要件で総額で年2% &最低賃金+30円が義務なのでそれをもう少し上乗せ宣言して加点ポイントにしてしまうのがお勧めです。
これらの加点ポイントはほとんどの申請者は押さえてきますので、もし自社が取らなかったら相対的に不利になると考えてください。
また減点ポイントという制度もあり、過去3年にものづくり補助金の交付を受けているとその回数に応じて減点という規定など、複数の減点項目があります。リピーターは若干不利に、ルーキーは相対的に有利になります。
事業計画書の全体構成を理解する
電子申請システムに入力する項目のうち、「具体的取組」という箇所が事業計画に相当し、審査上もっとも重要な部分になります。大まかに以下の流れで構成されています。
1 今回の事業実施の背景(1000字以内)
2 会社全体の事業計画(1000字以内)
3 今回の事業/事業実施期間の具体的アクション(1000字以内)
4 今回の事業に要する経費(1000字以内)
5 今回の事業の革新性・差別化(1000字以内)
6 今回の事業が事業計画期間に市場に与える効果/付加価値額の増加(1000字以内)
7 今回の事業が事業計画期間に自身に及ぼす効果/賃金引上げ(500字以内)
8 地域の資源や地域経済への貢献(500字以内)
審査項目②経営力の採点に大きく影響する項目
以下の2項目が該当します。この2項目は「なぜ今、この事業に取り組むのか?」を説明するステップです。
審査項目②の経営力の評価に大きく影響しますので、その審査項目詳細を意識します。
1 今回の事業実施の背景(1000字以内)
2 会社全体の事業計画(1000字以内)
- 市場環境の変化
- 自社の課題・ニーズ
- 会社の中長期ビジョンとの整合性
重要: 単に「売上を増やしたいから」ではなく、「業界の構造変化に対応するため」「顧客の新たなニーズに応えるため」といった背景を、できるだけ数値や外部環境の分析に基づいて説明しましょう。
審査項目③事業性、審査項目④実現可能性の採点に大きく影響する項目
3 今回の事業/事業実施期間の具体的アクション(1000字以内)
4 今回の事業に要する経費(1000字以内)
ここで、投資する設備やシステムの詳細を説明します。
- 導入する機械・システムは何か
- なぜそれが必要なのか
- 他社製品との比較検討は十分か
- その導入により、どのような生産プロセスが変わるのか
重要: 「〇〇という装置を導入する」だけでなく、「従来は手作業で月150時間を要していた工程が、この装置により月50時間に短縮され、その余力で新製品開発に人員を割く」といった具体的な効果を示すことが大切です。
5 今回の事業の革新性・差別化(1000字以内)
あなたの新製品・新サービスが、既存製品と何が異なるのかを明確にしましょう。
- 市場にはどのような競合品があるか
- あなたの製品はどこが優れているか
- なぜお客様がそれを必要とするのか
- 特許などの知的財産は保護されているか
重要: 「業界初の○○」「従来比で△倍の性能」といった差別化ポイントがあると、審査加点につながります。
計画は絵に描いた餅ではダメです。実現のための体制と工程表が不可欠です。
- プロジェクトチームは誰か
- 必要な専門知識は社内にあるか、外部専門家を活用するか
- 年単位でのマイルストーンと具体的アクションは何か
- 各段階での成功指標(KPI)は何か
重要: 「令和7年4月に設備導入」「令和7年8月に新製品完成」「令和7年12月に販売開始」といった時間軸を明確にすることで、現実性が高まります。
6 今回の事業が事業計画期間に市場に与える効果/付加価値額の増加(1000字以内)
7 今回の事業が事業計画期間に自身に及ぼす効果/賃金引上げ(500字以内)
この事業によって、会社全体にどのような利益をもたらすかを示します。
- 新製品の売上目標は3~5年でいくらか
- 会社全体売上に占める割合は10%以上か
- 営業利益はどの程度増加するか
- 投資額に対する回収期間は
重要: 高付加価値化枠では、「3~5年の事業計画期間内に新製品・サービス売上が企業全体売上の10%以上となる」ことが要件です。この条件をクリアしているかを必ず確認しましょう。
補助金事務局は、「1円の補助金投入に対して、どの程度のリターンが期待できるか」という視点で評価します。
例えば:
- 補助対象経費:1,000万円
- 補助率:1/2(補助金額500万円)
- 新製品の想定売上(3年累計):1億5,000万円
- 想定利益率:20%(3,000万円)
このように、「補助金500万円→3年で3,000万円の利益創出」という形で、費用対効果の高さを示すことで、評価が大きく変わります。
審査項目⑤政策面の採点に大きく影響する項目
8 地域の資源や地域経済への貢献(500字以内)
公募要領の審査項目5:政策面の欄を見て頂くと、さらに細分化して5つの要素が記載されています。それらに対して自社の事業が適合していことをアピールします。事業内容によっては厳しいところもありますが、多少こじつけでも何も触れないよりは触れる方がいいです。
よくある失敗パターンと対策
申請サポートの経験から、以下のようなケースが採択されにくい傾向にあります。
失敗例1:「既存製品の単なる置き換え」
「従来の人手作業を自動化する」だけでは不十分です。その自動化により時間が生まれ、その時間を使って「新しい何かを開発する」というストーリーが必要です。
対策: 「自動化→生産効率向上→その余力で新製品開発→新市場開拓」という因果関係を明確に示しましょう。
失敗例2:「定性的な説明に終始している」
「品質が向上する」「効率が良くなる」といった曖昧な表現では、審査員は判定しきれません。
対策: 「不良率が現在の3%から1%に低下」「生産時間が月100時間から50時間に短縮」といった具体的な数値を示すことが重要です。
失敗例3:「会社全体の戦略と乖離した計画」
補助金のためだけの計画に見えると、評価は低くなります。
対策: 会社の経営計画や5か年計画の中に、この事業がどう位置づけられているのかを明確に説明しましょう。
実践的な作成フロー
では、実際にどのような手順で事業計画書を作成するのか、フローをご紹介します。
ステップ1:市場分析と現状把握
- 業界動向の調査
- 顧客ニーズの整理
- 自社の強み・弱みの分析
- 競合他社の動向把握
ステップ2:事業アイデアの具体化
- 新製品・新サービスのコンセプト決定
- ターゲット顧客の明確化
- 差別化ポイントの整理
ステップ3:設備・投資計画の検討
- 複数の機械装置メーカーから見積書取得
- 仕様比較と最適化
- 導入スケジュール決定
ステップ4:経営計画への落とし込み
- 売上予測の算出
- コスト構造の把握
- 利益計画の策定
- 損益分岐点の確認
ステップ5:事業計画書の執筆
- 電子申請システムの各項目に入力する文章の執筆
- 複数回の推敲と改善
- 外部専門家によるレビュー
専門家サポートの活用が成功のコツ
ここまでお読みになってお気づきかもしれませんが、事業計画書の作成には、市場分析、技術知識、財務知識、そして申請制度の理解が求められます。
当社では、中小企業診断士による専門的なサポートを通じて、採択の可能性を大幅に高めるお手伝いをさせていただいております。ご興味があればお気軽にお問い合わせください。
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