事業再構築補助金(令和5年度版)
事業再構築補助金は、中小企業がコロナ禍でも事業存続を図るために行う事業再構築の取り組みを補助金で支援してくれるという制度です。
令和3年度に5回の募集が行われました。
令和4年度も4回の募集が行われました。
令和5年度も延長であと3回の募集があることが発表されました。つまり累計で第12回目までの募集がされる予定です。
現在は第11回公募が開始して応募締切は2023年10月6日です。
概要資料と公募要領をもとに、制度の概要を記載します。
条件がコロコロ変わるので、以下の解説がまだ更新が追い付いていない場合があります。
最新情報は公式ホームページにてご確認ください。
概要
以下の画像が、現在公開されている令和5年度版の制度概要です。

対象条件
以下が、令和4年度版の必須要件でした。
これに加えて応募枠ごとの追加の要件もありますが、まずは下記を満たすことが前提でした。
1.2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年又は2020年1~3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少している中小企業等。 |
2.事業再構築指針に沿った事業再構築(新分野展開、業態転換、事業・業種転換等)を行う。 |
3.事業再構築に係る事業計画を認定経営革新等支援機関と策定し、その事業計画にて補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加の達成。 |
一方、令和5年度版の必須要件は、以下の情報が出ています。

令和4年度版の「1」に記載されていた売上減少要件が撤廃されました。従来はこれがネックで成長傾向の企業やコロナ後に創業した企業が応募できないというケースがありましたが、そうした企業も応募できるようになります。
令和4年度版の「2」「3」に書いてあった内容が、少し表現を変えて令和5年度版の共通必須要件の(1)(2)に分けて書かれていますが、内容的にはほぼ同じです。
事業再構築指針とは
事業再構築指針は公式ホームページに掲載がありますので参照ください。正式文書は「事業再構築指針」という文字だけの文書ですが、「事業再構築指針の手引き」という資料の方が分かりやすいのでこちらを参照することで差し支えないでしょう。

応募枠ごとの条件と補助額・補助率について
令和5年度版の事業再構築補助金は、取組内容に応じて6つの応募枠があり、補助上限や補助率が変わります。
(1)物価高騰対策・回復再生応援枠
※必須要件に加えて、「2022年1月以降の連続する6ヵ月のうち、任意の3ヵ月の合計売上高が、2019年~2021年の同3ヵ月の合計売上高と比較して10%以上減少していること」が条件になります。(他に中小企業活性化協議会等から支援を受けて再生計画等を作成しているという条件でも代替可です)
※従来の緊急対策枠と回復再生応援枠を統合したような枠になります。
※従来はコロナ影響を受けていることが重視されていましたが、今後は物価高等の影響で2022年以降に売上減少していることが重視されるようになりました。
補助金額:従業員5人以下は最大1,000万円
従業員6人~20人は最大2,000万円
従業員21人~50人は最大3,000万円
従業員51人以上は最大4,000万円
補助率 :中小企業 2/3(一部3/4) 中堅企業は一部1/2(一部2/3) ※詳細は公式ページ参照
(2)最低賃金枠
※必須要件、および(1)物価高騰対策・回復再生応援枠に記載した売上減少要件を満たすことに加えて、「2021年10月から2022年8月までの間で、3月以上最低賃金+30円以内で雇用している従業員が全従業員の10%以上いること」という条件になります。
※(1)物価高騰対策・回復再生応援枠と比べて、補助上限は下がりますが、補助率が少し高く、採択率も高いはずです。少ない金額でもいいので確実に補助を受けたいという企業にピッタリの枠です。
※最低賃金ギリギリで雇用している従業員が多い企業は2022年10月からの最低賃金引上げが経営に与える影響が大きいので優遇するみたいな趣旨のようですが、個人的にはあまりよくない優遇条件だなとは思います。でも該当する企業はチャンスなので積極利用しましょう。
補助金額:従業員5人以下は最大500万円
従業員6人~20人は最大1,000万円
従業員21人~50人は最大1,500万円
補助率 :中小企業 2/3 中堅企業は一部1/2
(3)成長枠
※必須要件に加えて、事務局が指定した「成長枠対象業種一覧」に対して進出する事業再構築が対象となります。
※令和5年度から新設された枠で、売上減少していない企業でも応募できるようになる注目枠です。
※「成長枠対象業種一覧」が3月中旬に第1弾が公表されました。日本標準産業分類の小分類ベースで指定されています。私が数えたところでは、日本標準産業分類の小分類の母数は530個あるのですが、成長枠対象はそのうち109個の指定でした。意外と少ないです。私としてはかなり期待していたのですが、正直少しガッカリな印象です。まだ続報があるかもしれないので様子を見たいと思います。
補助金額:従業員20人以下は最大2,000万円
従業員21人~50人は最大4,000万円
従業員51人~100人は最大5,000万円
従業員101人以上は最大7,000万円
補助率 :中小企業 1/2(大規模な賃上げを行う場合は2/3)
中堅企業 1/3(大規模な賃上げを行う場合は1/2)
※大規模な賃上げとは、事業終了時点で、①事業場内最低賃金+45円、②給与支給総額+6%を達成すること
(4)産業構造転換枠
※必須要件に加えて、事務局が指定した「縮小業種」または「縮小地域」に属する企業が行う事業再構築が対象となります。
※「縮小業種」や「縮小地域」は業界団体や自治体から募集して決めるようですが、この決め方だとあまり多くはならなそうな気がします。対象企業はあまり多くならない予感がします。
補助金額:従業員20人以下は最大2,000万円
従業員21人~50人は最大4,000万円
従業員51人~100人は最大5,000万円
従業員101人以上は最大7,000万円
補助率 :中小企業 2/3
中堅企業 1/2
(5) グリーン成長枠
※グリーン分野での事業再構築を通じて高い成長を目指す取り組みが対象。ただしかなり申請時に求められる情報量が多くなるので申請は大変です。詳細は公式資料を参照ください。
補助金額:エントリーは中小企業が最大8000万円、中堅企業が最大1億円
スタンダードは中小企業が最大1億円、中堅企業が最大1.5億円
補助率 :中小企業 1/2(大規模な賃上げを行う場合は2/3)
中堅企業 1/3(大規模な賃上げを行う場合は1/2)
(6) サプライチェーン強靭化枠
※生産拠点を(海外から)国内回帰する事業である取り組みが対象。ただ条件はかなり複雑で申請は大変です。詳細は公式資料を参照ください。
補助金額:最大5億円
補助率 :中小企業 1/2、中堅企業 1/3
以上の6つの枠がありますが私の考えでは、売上減少要件の条件があえば(1)物価高騰対策・回復再生応援枠 と、対象業種の条件があえば(3)成長枠、の実質2択くらいだと思います。残りはかなりレアなケースにしか当てはまらない枠で、あまり考えなくていいと思います。
対象経費
概要資料や公募要領には以下のように書いてありますね。
建物費、設備費、システム購入費、外注費(加工、設計等)、研修費(教育訓練費等)、技術導入費(知的財産権導入に係る経費)、広告宣伝費・販売促進費(広告作成、媒体掲載、展示会出展等)等が補助対象経費に含まれます。
【注】補助対象企業の従業員の人件費及び従業員の旅費は補助対象外です。
これはものづくり補助金の対象経費と似ていますが、ものづくり補助金と違って「建物費」を含められるのが特徴的です。ただ当初は建物新築も可でしたが、令和4年度から新築は原則不可になり、内外装の改装のみが対象になります。また構築物は不可なので例えば外構や舗装の工事は対象外になります。
あとものづくり補助金では不可だった「研修費(教育訓練費等)」も含められますね。同様にコロナ型のみで限定的に可能だった「広告宣伝費・販売促進費」も対象に含められます。
従業員の人件費が入れられない点はものづくり補助金と同様です。
ものづくり補助金との比較
「ものづくり補助金」との違いを表形式でまとめてみました。
ものづくり補助金 | 事業再構築補助金 | |
---|---|---|
応募条件 | 売上減少要件は特にない | 応募枠に応じた条件がある。 一部枠は2022年以降に売上高10%以上減少が必要。 他の枠もそれぞれの条件がある。 |
補助金額 | 通常枠は最大1,250万円。 グローバル枠で最大3,000万円 | 応募枠によって異なるが、 物価高騰対策・回復再生応援枠で最大4,000万円 成長枠で最大7,000万円など |
補助率 | 小規模企業は2/3、中小企業は1/2 | 応募枠によって異なるが、 小規模~中小企業は2/3、中堅企業は1/2 の条件が中心になる |
認定支援機関の関与 | 特に必須ではない | 認定支援機関の関与が必須 |
取り組み内容の条件 | 革新的な商品やサービスの開発、 または生産方法や提供方法の改善を伴う、 取り組みが対象 | 経産省が⽰す「事業再構築指針」に沿った 取り組みが対象 |
事業計画の条件 | 付加価値額の年率平均3.0%以上増加 給与支給総額を年率平均1.5%以上増加 (加点を受けるには年率平均3.0%以上増加) | 付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加 応募枠によっては給与支給総額と最低賃金の増加条件あり |
対象経費 | 機械装置(設備)・システム購入、外注費など | 左記に加えて建物改修費や広告宣伝費なども対象 |
採択率について
発表があった第9回公募までの採択率は以下の通りです。
特別枠などは審査の優遇があり、通常枠よりも高い採択率になります。
他の補助金では回を追うごとに申請数が激増して採択率が下がるパターンがよくあるのですが、事業再構築補助金については申請数が安定していて採択率は増加傾向です。基本的に1社1回しか受給できないので、本気度の高い企業は早い回で採択して抜けている傾向があります。そのため第6回から申請数が減っていきました。申請数の増減に関わらず各回の予算(≒採択数)はあらかじめ目安が決まっている節があり、申請数が減ると採択率は上がる傾向があります。
なお第9回は急遽臨時募集された枠のため、申請数はさらに減りましたがそれ以上に予算も少なかったようで採択率が少し下がりました。第10回以降はまた予算確保されているはずなので採択率の上昇が期待できます。
募集回 | 応募締切日 | 採択発表日 | 申請数 | 採択数 | 採択率 |
---|---|---|---|---|---|
第1回 | 2021/05/07 | 2021/06/18 | 22,231 | 8,016 | 36.1% |
第2回 | 2021/07/02 | 2021/09/02 | 20,800 | 9,336 | 44.9% |
第3回 | 2021/09/21 | 2021/11/30 | 20,307 | 9,021 | 44.4% |
第4回 | 2021/12/21 | 2022/03/03 | 19,673 | 8,810 | 44.8% |
第5回 | 2022/03/24 | 2022/06/09 | 21,035 | 9,707 | 46.1% |
第6回 | 2022/06/30 | 2022/09/15 | 15,340 | 7,669 | 50.0% |
第7回 | 2022/10/05 | 2022/12/15 | 15,132 | 7,745 | 51.2% |
第8回 | 2023/04/06 | 2023/04/06 | 12,591 | 6,456 | 51.3% |
第9回 | 2023/03/30 | 2023/06/15 | 9,363 | 4,259 | 45.5% |
第10回 | 2023/06/30 | まだ | |||
第11回 | まだ | まだ | |||
第12回 | まだ | まだ |
採択を得るためには
採択を得るためには審査方法を理解する必要があります。
動画でも解説していますので、よろしかったら下記の動画を参照ください。
文章で読みたい方のために、動画でも話している内容の要約を以下記載します。
- 提出した事業計画書を、「審査員(外部専門家)」が「審査項目」に沿って審査します。
- 審査員(外部専門家)は、主に「中小企業診断士」で構成されると言われている。
- 中小企業診断士は、9割以上が男性、年齢層高め(50代、60代)の人が多いことを意識。
- 事業計画書1件あたりかなり短い時間で審査していると思われる。
- 審査員はその事業・業界の専門家ではないので、専門用語を多用せずに素人でも理解できる平易な説明をすること。
- 審査員(読み手)をイメージして、読む人に分かりやすい書き方をすること。
- 審査員も人間なので、読みやすい書類は高い採点、読みにくい書類は低い採点につながる。
- 文字サイズは小さくしない(老眼の審査員も多い)、最低でも10.5ポイント以上推奨。
- 要点を絞った記述、箇条書き、効果的な図表や写真等を活用。
- 審査項目は公募要領にすべて記載されているので熟読すること。大きく分けて以下の5つに分類。
- 1.事業化点
- 2.再構築点
- 3.政策点
- 4.応募枠ごとの論点(グリーン成長点、大規模賃上げ、卒業計画)
- 5.加点項目、減点項目
- 以上のうち、「1.事業化点」と「2.再構築点」を審査員(中小企業診断士など)が採点し、配点が高い。
- 審査項目で問われているポイントは、必ず事業計画書に盛り込むこと。
- 「1.事業化点」には①~④の4つ、「2.再構築点」には①~⑤の5つの項目があり、すべてに配点がある。
- 9つの審査項目の解説は動画を参照ください。
- 事業内容によっては書きずらいものもあるが、それでも審査項目に対する記述を何も書かないのは厳禁。
- 全ての審査項目に対応する記述を必ず何かは書いて、最低でも部分点を狙う戦術をとること。
事業計画書の書き方
採択のためには事業計画書が大事と分かりましたが、事業計画書はどう書いたらいいでしょうか?
それも動画でも解説していますので、よろしかったら下記の動画を参照ください。
実際に採択された事業計画書の実物も使って書き方を解説していますので、ぜひご視聴ください。
動画で話している内容の要約を以下記載します。
- ページ数は補助金額1500万円以下の申請は10ページ以内、1500万円超で15ページ以内。
- 1ページ目は指定様式があるので、それに沿って書く必要がある。
- 最終ページは「まとめ」に使用するのを推奨。
- したがって事業計画書の本編は、補助金額1500万円以下は実質8ページ、1500万円超でも実質13ページ。
- 本編の章立ての推奨は以下の通り。この章立てに沿って書きながら、審査項目へのアピールを盛り込む。
1:補助事業の具体的取組内容
(1)現在の事業の状況について
(2)強み・弱み、機会・脅威について
(3)既存事業の事業環境について
(4)事業再構築の必要性
(5)事業再構築の具体的内容
・ 新事業の概要(誰に、何を、どのように)
・ 導入する設備等(改装の平面図や機械装置の型番)
・ 既存事業との相乗効果
2:将来の展望(事業化に向けて想定している市場及び期待される効果)
(1)本事業の成果の具体的なユーザー、マーケット及び市場規模
(2)本事業の成果の優位性や収益性
(3)本事業の成果の事業化見込(損益計画)
(4)本事業の課題やリスクとその解決方法
3:本事業で取得する主な資産
4:収益計画
(1)本事業の実施体制
(2)本事業のスケジュール
(3)本事業の資金調達計画
(4)会社全体の収益計画
動画の中で、実際に採択した事業計画書の実物も使って解説してますのでご覧ください。
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採択後の手続きについて
採択されたとしても安心はできません。
採択後の手続きはとても煩雑で時間がかかります。
特に「交付申請」と「実績報告」の2つが、何度も差戻しを受けながら再提出を繰り返してようやく承認されるという感じになります。個別のノウハウはブログの方にも掲載しますので参照ください。
当社の申請支援サービスについて
当社では事業再構築補助金の申請支援サービスを行っています。
まずは初回打ち合わせで、お客様の事業プランをお聞かせいただき、当社サービスの前提条件・注意点を説明いたしまして、双方合意できましたら着手金を入金頂いて支援開始という流れになります。
料金体系は以下となっております。

当社の実績としては、以下の採択件数です。
・第1回公募では4社が採択。
・第2回公募では2社が採択。
・第3回公募では3社が採択。
・第4回公募では3社が採択。
・第5回公募では3社が採択。
・第6回公募では4社が採択。(採択率100%)
・第7回公募では2社が採択。(採択率100%)
・第8回公募では2社が採択。(採択率100%)
・第9回公募では2社をご支援して1社採択、1社不採択。(採択率50%)
・第10回公募では5社(新規4社+第9回不採択からの再チャレンジ1社)をご支援して結果待ち。
第9回までの累計でいうと28社をご支援して、24社が採択(再チャレンジでの採択を含む)となっています。100%とはいきませんが、高い採択率ではないかと思っております。
ご興味ある方はお問い合わせフォームからご連絡ください。まずは初回打合せ(無料)で応募条件を満たしているか確認させて頂き、お互いに納得して合意したら正式に進めていきます。