2023年度(令和5年度)の事業再構築補助金について

先週3月24日をもって事業再構築補助金の第9回公募が締め切られました。これで2022年度(令和4年度)の公募は終了となりました。

しかし2023年度(令和5年度)も制度が延長されて続くことが決まっています。
公式ホームページには少し前から「事業再構築補助金令和4年度第2次補正予算の概要」という資料が公開されています。ちなみに、少し分かりにくいのですが令和4年度補正予算というのは要するに令和5年度のための予算です。令和5年度用に5800億円の予算が確保されていて、3回程度の募集を行うことになっています。なおこれまでも公募1回あたり平均で2000億円くらいの予算だったので、今後3回の公募もこれまでと同程度の規模になると考えられます。

その令和5年度の初回となる第10回公募が令和5年3月下旬頃に公募開始を予定していると記載されているのでもうすぐ公募要領が出るころではありますが、その前に現段階で分かっている内容を整理しておこうと思います。

今年度は6つの応募枠(類型)が用意されます。このページの冒頭に記載した画像は公式資料から抜粋したものです。
その記載では補助上限の少ない順に左から並べて書く形になっていますが、これを少し順番を変えて前年度の応募枠と対比させて整理して作ったのが下記の画像です。

こちらの順番に沿って、①~⑥まで少し解説したいと思います。
ここでは制度の詳細というよりは、私なりの解釈とか評価を中心に書いていきたいと思います。

①物価高騰対策・回復再生応援枠

従来の緊急対策枠と回復再生応援枠を統合したような枠になります。
応募条件は「2022年1月以降の連続する6ヵ月のうち、任意の3ヵ月の合計売上高が、2019年~2021年の同3ヵ月の合計売上高と比較して10%以上減少していること」が条件になります。(他に中小企業活性化協議会等から支援を受けて再生計画等を作成しているという条件でも応募可能ですが、ここでは省略します)

売上減少の計算方法自体は従来と同じなのですが、従来はこれに加えて「コロナによる影響を受けていること」という条件も満たす必要がありました。このコロナによる影響が今後は問われなくなった、というのが私としては注目ポイントだと捉えています。これと関連して、従来は審査基準の中でもコロナによる影響を受けていることや、そこから回復できる事業計画かどうかが結構重視されている印象がありましたが、もうすぐ公開される次回の審査基準ではおそらくコロナ影響はあまり問われないものに変わりそうと予想しています。

したがって、コロナ影響はそれほど受けていないが2022年1月以降に売上減少はしているという企業が、事業再構築補助金を活用して新事業展開することはかなりやりやすくなるだろうという印象です。

②最低賃金枠

従来の最低賃金枠とほぼ同じ条件です。①に記載した売上減少に加えて、「2021年10月から2022年8月までの間で、3月以上最低賃金+30円以内で雇用している従業員が全従業員の10%以上いること」という条件も満たした企業が応募できます。

毎年10月に各都道府県ごとに最低賃金引上げが行われますが、2022年10月の引上げ幅は結構大きかったです。最低賃金ギリギリで雇用している従業員が多い企業ほどその影響が大きいので補助対象として優遇しましょうというような趣旨と思われます。でも個人的にはむしろ給与をたくさん払っている企業を優遇すべきだと思うのですが・・・

まあとにかく、①と②の条件を両方満たす企業には選択肢があるということです。
従来同様に、②の枠は補助上限が低めに抑えられていますが、その代わりに補助率が3/4と高くて、採択率も高めなので、小さくてもいいから確実に採択を受けたいという企業にお勧めです。

③成長枠

こちらは注目の新設枠です。
従来の通常枠というのがなくなって、代わりに新設された枠となります。

従来の通常枠ではコロナ影響で売上減少していることが必須条件でしたが、この成長枠では売上減少要件がなくなりました。売上減少していない企業でも応募可能となります。

ただし、事務局が指定した「成長枠対象業種一覧」に対して進出する事業再構築のみが対象となります。その「成長枠対象業種一覧」が3月中旬に第1弾が公表されました。日本標準産業分類の小分類ベースで指定されています。私が数えたところでは、日本標準産業分類の小分類の母数は530個あるのですが、成長枠対象はそのうち109個の指定でした。意外と少ないです。私としてはかなり期待していたのですが、正直少しガッカリな印象です。まだ続報があるかもしれないので様子を見たいと思います。

④産業構造転換枠

構造的に市場縮小している業種または地域に属する企業が、新事業に取り組むための枠となっています。

応募条件として、事務局が指定する「対象業種(市場縮小している業種)」または「対象地域(市場縮小している地域)」のどちらかに属する企業が対象です。この事務局の指定は、業界団体または自治体から公募して応募があったものの中から審査して決めるようです。

でもそうすると、わざわざ業界団体の方から「うちの業界は市場縮小している業界であり、所属する企業が事業再構築で別事業に進出することを認めたい」と言い出さない限り指定業種にならないし、もしくは自治体が「うちの地域は市場縮小している地域です」と名乗り出ないかぎり指定地域にならない、ということなので対象業種・対象地域はかなり少なくなるのではないかと予想します。かなり対象が絞られる枠になると思われます。

⑤グリーン成長枠

こちらは従来もあった枠ですが、少し制度が変わって継続となりました。

ただ、詳細記載は省略しますが、従来もグリーン成長であることを証明するための文章・記載がかなり求められてものすごく煩雑で使いづらい印象だったのですが、今後も同様のようです。引き続き使いづらい枠だという印象です。

⑥サプライチェーン強靭化枠

生産拠点を(海外から)国内回帰する事業である取り組みが対象。ただ条件はかなり複雑で申請は大変です。
補助金上限が5億円と大きいですが、使える企業は限られる枠だという印象です。

まとめ

まとめとして、④⑤⑥に記載した枠はかなり使い勝手が悪く、実質的には①②③のみと考えられます。


もし自社業績が売上減少要件の条件にあっていれば①物価高騰対策・回復再生応援枠 がお勧めです。もしくは②最低賃金枠の条件も満たしているならそれも検討して選択です。この2つの枠は従来から少しマイナーチェンジはあるにしても、従来と大きくは変わらないと思われます。

自社業績が売上減少していないけどさらなる拡大のために新事業進出した会社の場合は、もし進出先の業種が③成長枠の指定業種になっていれば活用可能です。その指定業種になっていない場合はもう少し様子見が必要です。成長枠については今後また別のブログ記事で続報を記載しようと思ってますのでお待ちください。